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軟水器を通すと、なぜナトリウムが増えるの?(超簡単化学)

軟水器のフィルターにあたるのが「イオン交換樹脂」です。
浄水器でいう「活性炭」にあたる部分ですね。

その「イオン交換樹脂」には、大きく4種類あって、それぞれ捕まえられる物質が違います。
家庭で使う一般的な軟水器には「Na型強酸性陽イオン交換樹脂」という種類を使います。
(難しいので覚えなくてOKです)

※紛らわしいものに「”H型”強酸性陽イオン交換樹脂」というのがあるので、もし手作りなどで樹脂を購入するときは、それと間違えないように注意してくださいね。


家庭用軟水器のイオン交換樹脂は、

 『硬度(Ca・Mg)をつかまえて、代わりにナトリウム(以下Na)を放す』

というタイプになります。

イオン交換樹脂は、ぱっと見たところ、ビーズのような小さくて丸いツブツブです。
それを拡大すると、実はたくさんの手をもっています。
その手の1つ1つに「イオンを1個」つかむことができます。

1個しかつかめないので、何かをキャッチしたら、何かを放さなきゃいけないんですね。

イオン交換樹脂が新品のときは、1つの手に1個のNaイオンをつかんでいます。
そこに硬水(Ca・Mg)を通過させると、今まで持っていたNaを放してしまうんです。

どうしてでしょうか?
そこで「イオン」というものの特徴の話(化学)になります。

イオンには「1価」とか「2価」とか言って、持っている電子の数に違いがある・・・という話は、高校化学の授業で習った方も多いと思います。
そして、イオンには「よりくっつきやすいイオン」「くっつきにくいイオン」もあります。

その話は、ここでは詳しく触れません。
(ご興味ある方は、化学系の本を見てみてください)

Ca・Mgは「2価」であり、くっつきやすいタイプのイオン。
Naは「1価」であり、くっつきにくいタイプのイオン。

だから、硬水→軟水になるときには、Ca・Mgをキャッチして、Naを放すんですね。

【すごーく噛み砕いて説明します】

「Ca・Mg」=ブランド物のボストンバック(両手でなければ持てない)
「Na」=安物のハンドバック(片手で持てる)

という設定です。

最初、片手に1個(両手に2個)のハンドバックをもって道を歩いていたあなた。
しかし、ブランド物のボストンバックが道に落ちていました!
慌てて、2個のハンドバックをポイポイッ!と捨てて、両手で1個のボストンバッグをガッチリ掴みました・・・

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ここまでの話を、化学式にしてみます。
(R=イオン交換樹脂です)

2R-Na+ + Ca2+ → 2R-Ca2+ + 2Na+

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ここから先は、増えてしまうNaの話。

軟水器を通すと、Naが増えてしまう・・・それって、健康に良くないんじゃない?
そんな質問を、よくいただきます。
そこで「ごく微量しか増えないので、大丈夫ですよ」とお話してきました。

その「ごく微量」というのは、一体どのくらいか?
「軟水器通過→硬度の半分がNaに置き換わる」という法則にしたがって、

「もともとの硬度÷2」+「もともと入っていたNa」 = 「軟水器を通過した後のNa量」

となります。
その”もともとの硬度の1/2”という数字の理由は、上記の化学式にあてはめると、説明ができます。

軟水器は、Ca・Mgイオンを1個キャッチすると、Naイオンを2個放します。
数だけ見ると、2倍の量が増えてしまう・・・と思うのですが、実はそうではありません。
Ca・Mgイオンと、Naイオンのサイズ(原子量)は違うからです。

(いわゆる”モル濃度”の話です・・・これも、化学の本をご参照くださいませ)

軟水器を通って、イオン交換樹脂にCa・Mgイオンがキャッチされた・・・
それと「同じ量の」Naイオンが放される・・・

すると、モル濃度の関係上、ちょうど「硬度の約半分」になるんです。
(ぴったり半分ではなく、正確には半分弱くらいです。CaとMgの比率でも変わります)

【先ほどのバッグの例にあてはめてみると?】

見事に高級ブランドのボストンバッグを手に入れたあなた。
しかし、そのバッグの重さは20kgもあったのです。

それに比べて、ハンドバッグは1個5kg。
両手で2個持っても、10kgしかありませんでした。

バッグの個数は2倍だったけれど、重さは1/2だった・・・。

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では、ラストです。再生のお話。

イオン交換樹脂が、Ca・Mgをキャッチし続けるのにも、限界があります。
すべての手がCa・Mgをつかみ終わってしまうときが来るのです。

すると、軟水器を通しても、硬水が硬水のまま出て行ってしまい、意味がありません。
そうなったときを「硬度もれ」といいます。

硬度もれしたら、塩水を使ってイオン交換樹脂を洗浄します。
塩水につけると、また最初のように、イオン交換樹脂の手にはNaがつかまれて、新品の状態になります。

このことを「イオン交換樹脂の再生」といいます。

では、なぜ塩水がくると、Ca・Mgを放してしまうのでしょうか?
理由は、塩水の「濃度」にあります。
たくさんのNaが含まれる、高濃度の塩水がくると、イオン交換樹脂はNaをキャッチしてしまうのです。


【先ほどのバッグの例にあてはめてみると?】

ボストンバッグを1個、両手で持って歩いていたあなた。
歩いていくうちに、大都会にやってきました。

たくさんの人がいて大混雑。
しかも、皆があなたが捨てた「ハンドバッグ」を持っています。

流行に敏感なあなたは、慌ててボストンバッグを捨て、ハンドバッグを2個持ち直しました・・・

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再生で使う塩水の濃度は、10%がもっとも効率が良いといわれています。
なめるとかなり塩辛く感じる濃度です。

塩水を通過させたあと、樹脂のあいだに余分な塩分が残ってしまうので、最後に真水ですすいだら「再生」は終了です。

つまり「軟水器には塩を入れるから、しょっぱい水が出てくるの?」というご質問もありますが、それはまったくありません。


また、軟水器を使って増えたNaの量と、食品から摂取するNaの量は、桁が100倍違います。
例えば、1日に5gのNaを摂取するとしたら、そのうち水から取れる量は0.05g・・・

ちょっぴりNaが増えた水を、毎日1リットルくらい飲んだところで、体への影響はほとんど無いということですね。

(もちろん、微量のNaにも注意しなければならない病気の方は、お医者さんにご相談ください)


・・・以上、簡単な軟水器のしくみ(化学編)でした。

2007年10月04日 2007年10月04日 17:49

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